国際ハゲタカ学会・ジャーナルについて若手研究者の僕が思うこと

研究者の世界の評価は簡単です。研究業績で評価されます。就職も昇進も研究費の獲得もほぼ研究業績だけで決められていると言っても過言ではないでしょう。

そんな学術の世界ではハゲタカジャーナル、ハゲタカ学会が問題になっています。

ずさんな審査で論文を掲載し掲載料を得るインターネット専用の粗悪学術誌「ハゲタカジャーナル」と同様に、参加料収入が目的とみられる国際学会が国内外で開かれている。学会の体裁をとるが発表内容の事前チェックはほとんどなく、研究者は事実上、参加料を払うだけで「国際学会で発表した」というお墨付きが得られる。専門家は「ハゲタカ学会」と呼び、問題視している。

引用元:ハゲタカ学会:何でも発表 参加料狙い? 手軽に「実績」研究者にも需要 – 毎日新聞

社会科学系の若手研究者である僕がハゲタカジャーナルやハゲタカ学会についてどう思っているのか?と言うと、「ハゲタカジャーナルやハゲタカ学会のカモにならないように気をつけなければ!」と思っています。そんな話です。

ハゲタカは通常の学会やジャーナルとどう違うのか?

査読論文は苦労が多い

研究業績の中でもっとも重要な業績は査読論文の本数であるとされています。

査読論文とは、同分野の研究者や専門家によるチェックのことで、そのチェックに合格すると学術雑誌に論文が掲載されます。だいたい2名の査読者が論文をチェックする仕組みです。僕の分野(社会科学・社会工学)の場合は、3万円くらいの査読料を払う必要があります(会員なら無料という場合もあります)。

査読を一発でクリアすることはほぼありません。査読後、査読者からコメントが送られてきます。僕はそのコメントを読むのが苦手です。基本的にいいことは書いてありません。「あれはおかしい!」「これはやり方が間違っている」「ここの論理は矛盾している」などの具体的かつ批判的なコメントが送られてきます。「査読論文のレベルに到達していない」と根本的なことを書かれたこともあります。

これらコメントに対して論文を修正したり、査読者に対して「いやいやあんたの方が間違ってる!ここはこういう意味で先行研究でもそうなっている」などの反論をして論文を再提出すると、再び査読が行われます。

査読は査読者からのコメントがなくなるまで続きます。2, 3回で終わるものだと思いますが、長い人だと1年間くらい査読と修正を繰り返した人もいるそうです。

また、根本的な修正が必要な場合は査読の過程で論文掲載を拒否されることもあります(リジェクトと呼ばれています)。有名なジャーナルでは採択率(リジェクト率)を公表している雑誌もあります。

査読を乗り越えてようやくジャーナルに論文が掲載されます。ジャーナルに掲載されると、自分の研究業績が増えるので嬉しいですし、就活での評価に関わるのでホッとします。

ハゲタカ学会・ジャーナルには査読がないから簡単

国際会議や国際ジャーナルにおいても、上述した査読プロセスが存在します。

日本の国内学会で発表する場合はせいぜい概要の審査がある程度ですが、国際会議の場合は概要のみならず論文(フルペーパー)の提出を求められ、査読審査が行われるのが普通です。僕の分野の場合、査読論文の審査ほどは厳しくない印象ですが、それでもちゃんと2名の査読者からコメントが送られてくるので、コメントに対する修正をしなければなりません。

しかし、ハゲタカ学会やハゲタカジャーナルにはそのような審査はありません。意味をなしていない文章で提出しても論文が掲載されたという話もありますので、研究者にとっては苦労が少なくて簡単です(でも、そんな所に論文投稿したら黒歴史になってしまうので絶対に関わりたくない!)。

ただ少し難しい話になるのですが、大きな有名な国際学会であっても概要の審査くらいしかなく、簡単に発表できる学会もあります。それをハゲタカ学会と呼ぶとは思えません。そういう学会はそういうのを目的とした学会なのです。そして、たかが国際学会での発表に過ぎないからです。僕の分野では、国際学会の発表だけでは大した業績になりません。

僕も危うく投稿しそうになったことがある

ハゲタカジャーナルからインビテーションが来て投稿しそうになった

ちゃんとした国際会議に参加すると、自分の論文タイトルや連絡先がネット上やプロシーディング(予稿集)に公開されてしまいます。その公開された情報を元にメールでコンタクトしてくる学会やジャーナルは全てハゲタカ学会、ハゲタカジャーナルだと思っています。

研究者じゃない人は「なんじゃそりゃ?」と思うかもしれませんが、本当に胡散臭いインビテーションのメールがたくさん来ます。

Dear あいことさん,

This is Journal of 怪しいジャーナル名, a professional journal published across the United States which was founded in 2004.

We are glad to know you have submitted a paper named 僕の発表のタイトル in 以前発表したちゃんとした学会. We are very interested in your researches and would like to publish your unpublished papers in 怪しいジャーナル, if you have unpublished article or book on hand and have the idea of making our journal a vehicle for your research interests, please send electronic version of your paper or book to us.

引用元:僕に届いたインビテーションメール

送信者は必ず女性で顔写真がついてくる場合もあり、その写真に映っているジャーナル事務局を自称する女性はとても美人です。おそらく研究者の世界は男性が多いので、美人な女性からメールが送られてきた方が引っかかりやすいとでも思っているのでしょう。

ですが、僕が初めてこのメールを受け取った研究者の卵時代(学生時代)、僕はこれがハゲタカジャーナルからのメールだとは知らなかったため、めちゃくちゃ喜びました。

あいこと
あいこと

このジャーナルの人、僕の論文に興味があるんだ!嬉しいなぁ

せっかくインビテーションをもらったので、添付されていたPDFやジャーナルのホームページにアクセスして論文投稿の準備を開始しました。

それから数日たった頃、たまたま先輩に会う機会があり、「あるジャーナルからインビテーションもらって、そのジャーナルに投稿しようと思ってるんですよ」と嬉々として話をすると、先輩は冷静にこう言ったんです。

ああ、それスパムみたいなやつやろ。あの手のジャーナルはインチキで、ネット上に公開されてるプロシーディングから情報とってきて不特定多数にメール送ってるんよ!ハゲタカジャーナルと呼ばれてるよ。

 

あいこと
あいこと

えっ!!まじですか・・・。あぶねぁ。

先輩のおかげで、僕にインビテーションメールが来たのは僕の論文に興味があったわけではなく、ハゲタカジャーナルのビジネスだったと知りました。

今でも思うのは、僕がハゲタカジャーナルの存在を知らずに博士号を取り、1人前の研究者の立場としてこの手のメールに出会っていたらハゲタカジャーナルに投稿したかもしれません。

自分の研究を見て連絡してくる人がいる!めちゃくちゃ嬉しい!よし、このジャーナルに投稿しよう!

そんな研究者は多いと思います。

僕の場合、ハゲタカ学会に参加しないと思う

一方で、僕はハゲタカ学会に関わったことはありません。ハゲタカジャーナルの場合はスパムメールとしてコンタクトしてきたため投稿しかけましたが、ハゲタカ学会に関しては一体どうやって出会うのかさえ知りません。

そもそも、国際学会で発表するだけではメリットが小さく費用が高いです。さらに国際学会での発表という業績は査読論文に比べると評価が小さいと思います。少なくとも僕の分野では国際学会での発表は発表にすぎないので評価されていないと思います。つまり、メリットがないです。

その割に、お金がかかります。参加費は、日本は先進国なので先進国価格と割高になり、3万円から8万円くらいかかります。航空券代やホテル代も含めるとアジア圏でも合計で15万円ほどになったり、欧米だと更に高くなります。20万円もかかるならそのお金を別の研究に充てて国内学会のジャーナルに投稿した方がましだと思います。

研究をコストベネフィットで語るべきではありませんが、若手研究者は給料は少なく任期は短く忙しいので、ベネフィットが低くコストが高い国際学会の参加はあまりしたくないです。そうなると、国際ハゲタカ学会に参加したいと思えません。

国際ハゲタカ学会に参加するのはお金に余裕があった研究者か、国際学会発表が大きく評価される分野の研究者なのでしょう。科研費などの国のお金で国際ハゲタカ学会に参加した場合、研究費の不正利用に限りなく近いわけですから、いずれ大問題になる気がします。

ハゲタカ学会やジャーナルから身を守れるのは自分自身しかいない

以上のように、ハゲタカジャーナルのカモになりそうになった僕ですが、国際ハゲタカ学会のカモになることはないと思っています。そして、今後に関してもどちらにも騙されることはないだろうと思いますし、業績作りのためにハゲタカ学会やハゲタカジャーナルを利用することもないでしょう。

でも、ニュースでも取りざたされているように、多くの日本の研究者がハゲタカジャーナルや国際ハゲタカ学会を使っていますが、若手研究者でハゲタカジャーナルのカモになりかけた僕の意見としては「研究者は、自分の身は自分で守るしかない」ということです。

今はインターネットで何でも情報が公開されています。研究者の情報も同様です。僕の名前を調べればネットの一番最初に僕の業績一覧みたいなページが出てきます。その業績一つ一つの論文についてもネット上で公開されています。

つまり、誰でも僕の業績が本当にちゃんとしているのかを調べることができるわけです。査読が通った論文であっても、たまたまアクセスした他の人が見れば間違ったことを書いているかもしれません。ましてやハゲタカジャーナルやハゲタカ学会を研究業績に書いていたらどうなるでしょう?

あいこと
あいこと

ハゲタカジャーナルリストとか調べたら出てきますので、調べれば簡単にわかります。

ネット上で大炎上して「○○教授不正の知らせ」なんていうスレッドが盛り上がることになるかもしれません。

ハゲタカジャーナルが業績にあると就職活動に不利になるかもしれません(今は不利になると言われています)。

ハゲタカジャーナルと知らなかった研究者だろうと、知っていて業績を増やすためにハゲタカジャーナルを利用した研究者だろうと、そんなのは関係ありません。「知らなかった」「バレないと思っていた」では済まされませんし、研究者は個人事業主みたいなものなので大学や研究機関は研究者を守ってくれないでしょう。

自分の身は自分で守るしかありません。自分が投稿したり参加したりするジャーナルや学会がハゲタカかどうかを自分でしっかりと見極める責任は研究者にしかありませんので、ハゲタカから自分でしっかり身を守るしかない!と思います。

今は微妙な学会でも、数年後には超有名会合になる国際学会もあるかもしれません。逆に、今は超有名でも実はろくな審査が行われていない学会もあるかもしれません。研究者はそれを見極めて、しっかりした学会に関わっていくことでしか自分を守れないでしょう。

僕も弱い人間です。うつ病で苦しみ、それから逃げるために仕事では重大な嘘もつきました。だから、ハゲタカジャーナルやハゲタカ学会に逃げる人の心理もわかります。でも、今は一切それらの学会参加や投稿は評価されません。

あいこと
あいこと

僕も、ハゲタカの犠牲者にならないように気をつけます!

もちろん、ハゲタカを意図的に使うこともしたくないです。せっかく頑張って実施した研究を台無しにはされたくないです。

まとめ

ハゲタカジャーナル、ハゲタカ学会に関しての僕の思うことを、ぐちゃぐちゃな構成ながら書きました。

基本的にはハゲタカジャーナル、ハゲタカ学会を使おうと思ったことはありません。でも、知らずに投稿しようとしたことはありました。自費で投稿したならば自分だけに迷惑がかかりますが、科研費や大学の予算をしようした場合は、迷惑のかかる規模が広がります。科研費のような国の予算の場合は、不正利用と言われるかもしれません。

ハゲタカジャーナルやハゲタカ学会から身を守れるのは自分だけなので、しっかりと調べてから投稿や参加をしようと思います。

おしまい。